2008年5月。穏やかな仁尾の海を目前にかまえるこの場所に、「古木里庫」が誕生しました。
古来より、日本の伝統建築に使われる梁や柱は、一度役目を終えても解体し、手を加えることで、幾度でも使用する事ができました。ところが、低コストで大量生産できる新建材が登場すると、再生できるはずの建材は不要なものとして処分されるようになりました。日々増えていく捨てられるだけの建築廃材。そんな現状に心をいため、古民家の梁や建具を集めはじめました。
そうして集まった古材を再利用し、大工さんの技術を惜しみなく注ぎこんで生まれたのが「古木里庫」です。
弓なりに大きく曲がった太い丸太を、何本も縦横に組んだ現しの梁。壁や柱に当たる部分には、その梁にぴったり合う加工が施されます。計算のない自然がつくりだす曲線を、思い通りに組み立てるのは、宮大工の技術があってこそです。
新築にはない深く濃い木の色は、その材がまとう時代を感じさせます。月日の記憶がしみ込んだ、貴重な古材に囲まれた古木里庫は、そこにいるだけで命に見守られているような、穏やかな感覚に包まれます。日本人にとって身近な「木」。忘れていた木との繋がりをを思い出せる、そんな場所です。